生き方の指針をもらいました

絵本に関する経験は入学前までゼロでした

わたしは、以前は役者などをやっていました。

結婚後、自分の思い描く世界観を自分の手でつくってみたいと思ったのが、絵本を学び出したキッカケです。

役者も表現する仕事なのですが、脚本や演出などがつくる世界の中で、役になりきってその世界を表現するものなので(それもすごく快感ではあるのですが)、世界を丸ごと自分の手でつくれて、かつ総合芸術である絵本というものに興味を持ったんです。

わたしは美大などを卒業したわけでもないし、絵は幼少のころに習っていた程度でした。

子供のころはよく読んでいたけれど、特に絵本に造詣が深かったわけでもなく、絵本をつくるという経験ももちろんゼロでしたが、今では様々なお仕事をさせていただいたり、好きなように自分の作品をつくれるようになりました。

学校の卒業生が入れるウーマンクリエイターズバンクというクリエイターエージェントがあるのですが、そこで出会ったアーティストさんと一緒に作品をつくるなど、プロデュース的な立場でも活動ができています。

共作した絵本の出版が決まりました

バンク経由でいただいたお仕事で、食材宅配のOisix(オイシックス)さんが、PRのためのノベルティ絵本をつくるということで、その文章作家をさせていただいたことがあって。

その絵本は、1万部もお客さんの元に届けられたので、とても充実感のあるお仕事でした。

そのときに、カレッジの卒業生でもあるケイ.キキキさんが絵を担当していて、その仕事ぶりや作風を拝見して、わたしが元々温めていた『にじいろかあさん』というお話にぴったりだとピンときたんですね。

ケイ.キキキさんの絵ならば、この物語の魅力をひきだしてくれて、素敵な作品世界が生まれるのではと思ったんです。

それで、ぜひこの物語に絵を描いてくれないかと、物語の文を送って。

そうしたら、ケイさんからはすぐにラフスケッチが届いたんです。

ちょうど喫茶店にいたらしく、イメージがわいたまま紙ナプキンにいっぱい描いたみたいで(笑)。

そんなにすぐにイメージがふくらんで描いてくれたってことで、このお話と絵のマッチングは成功したなと、そのとき早くも思いました。

そして、自家製の試作本ができて、そのまましばらく展示会やサイト等で公開したりしていたんですが、このたび大幅にリニューアルして、『にじいろかあさん』が、2019年にCHICORA BOOKSより出版されることが決まりました。

試作本では、どちらかというとお母さんに向けたものだったんですが、出版にあたり、お母さんが子どもに読み聞かせしやすい作品に生まれ変わり、2019年4月にリリースされ、発売前から増刷が決まるなど、大きな反響を呼びました。

 

絵本づくりは「絵と物語を描くこと」とイコールではない

入学して、絵本に対する誤解がいくつかあることに気づきました。

わたしは最初、絵と文がかければ絵本はつくれると思っていたのですが、作品を表現していくためには、魅力的な構成、レイアウトをはじめ、デザイン、DTP、作品のマーケティングやセルフブランディングまで含めてわかっていた方が、想いを細部まで表現でき、見る人にも伝わるのだということを学びました。

また逆に、私のように文を書いたりストーリーを練ったりするのは好きだけれど、絵を描くのはあまり得意でなかったり、その反対であっても、絵本はつくれるのだということもわかりました。

自分のつくりたい作品世界を、より魅力的に表現してくれるアーティストや技術者にそれぞれ依頼して、作品づくりをプロデュースしていけばできあがるのだと。

最近、キャラクタ一メイキングに力を入れた絵本もつくっているのですが、絵本ができた後のキャラクター展開など、広い視野を持って考えるようにしています。

これらのことは、これから絵本づくりを学ぶ多くの方が初めて経験することなのではないでしょうか。

わたしも、すべて初めてのことだったので苦労もありましたが、自分自身のコトバで表現した自分の作品ができあがったときには、これまで味わったことのない感動を得ることができました。

 

商業クリエイティブの経験も活きています

卒業後は、ウーマンクリエイターズバンクでいくつも、クライアントから依頼されたお仕事をさせていただきました。

自分の好きな作品をつくっているときとは違い、クライアントのお仕事は、クライアントの思考に沿う提案を考えながら文章を書いたりするので、同じ創作でも異質なものでした。

はじめは表現方法の違いにとまどうこともありましたが、それを乗り越えながら作品として昇華させていった経験は、今でもクライアントから選んでいただき、仕事をさせてもらえる機会につながっていると思います。

また、自分の作品づくりにおいてもこれらの経験は活きていて、作品の目的やターゲットを意識するなど、ひとりよがりになりすぎない思考ができるようになりました。

 

経験、お仕事、実績、報酬、そして機会

ウーマンクリエイターズカレッジ、およびバンクでは、経験、お仕事、実績、ギャランティ一(笑)などの物理的なものから、機会も多くいただきました。

絵本などは、作品をつくって終わりではなくて、その先に読み手がいるということも実感しています。

学校では、企画発表会や卒業展示会で多くの人に見てもらえる機会があったのはとても印象に残っています。

はじめは自分の中で空想していただけの世界を作品として見てもらい、知らない人が自分の作品を見て楽しんでくれたり、次作を心待ちにしてくれていたり、熱烈な応援メッセージをいただいたり、琴線に触れて号泣してくれたりするのに触れたときには、なんともいえない感動がありました。

自分が伝えたい思いに、作品を通して共感してくれる方々と出会える機会があることは、創作者の醍醐味だなと思います。

こういう快感は他では味わえないかなと思うので、やみつきになっちゃいました(笑)。

ともに歩む同志との出会いと、「個」の時間

わたしにとって、物語を思い描くときが一番集中して高揚する時問です。

ー方で絵については、嫌いではないけれど、気分がのっていないとたくさん描くのはしんどいし(笑)、自分よりも素敵な絵を描ける絵描きさんは山ほどいるわけです。
なので、絵本をつくるときには、作品世界をより素晴らしく表現してくれる絵描きさんを作品ごとに見つけて、お声がけして共作することにしています。

自分のなかでストックしてある物語にぴったりとハマる絵描きさんを見つけるためにも、毎年ある学校の卒業展示会などにもなるべく足を運んでいます。

わたしは、入学してすぐ妊娠して、在学中に出産したのですが、学校に来ている間は「母」や「妻」としての自分以上に、「個」でいられました。

自分が表現したいものを探したり、生き方を見つめたりする時間だったので、純粋に自分に対して向き合うことができたんですね。

出産、産後育児の時期と、卒業制作の絵本の制作期間がかぶっていたので、けっこう忙しかったんですが、そういう時間を持てたことで、かえって、産後のストレスフルな育児生活にもメリハリがついて、楽しくやれたような気がします。

また、同期の一緒に学んだメンバーと励まし合い、ともに切磋琢磨したことでのりきることができたという部分も大きいと思います。

そういう少人数制ならではのアットホームな教室の雰囲気も、この学校の魅力の一つだと思います。

学校では、「生き方の指針」をもらいました

学校で得たことは数えきれませんが、あえて一つあげるなら、生き方の指針をもらったことかなと思います。

押しつけではなく、自分で考えてどういう風に生きて、何をつくっていくかを考える、そんなキッカケやヒントをもらいました。

先生がたも、自分の生きざまを見せてぶつかってくれたりするので、絵本をつくることを超えて、どう生きるかという意味でも多くのことを教えていただいたなと思っています。

思いつきから、ライフワークを見つけるまでに

わたしは本当に、絵本に関する知識も、絵や物語を描くということも、ほぼゼロスタートでした。

興味を持ったのもふとした思いつきで、なんとなくインスピレーションを感じて勢いで入学しましたが、今では一クリエイターとして様々なお仕事をさせてもらえたり、好きなように作品をつくることができるようになりました。

なので、もしも「ちょっと興味はあるけど、自分にはできないんじゃないか」とか、「なんの経験もない普通の主婦だし……」とか思ってためらわれている方がいらっしゃるなら、深く考えずに軽い気持ちで、まずは何か学んでみたり、つくってみたりすることで、見えてくるものがあるんじゃないかなあと思います。

軽い気持ちで入学したのをきっかけに、わたしは今では、絵本に限らず小説なども書いていて、おばあちゃんになっても一生物語の創作をしていきたいなあと思うようになりました。

はじめてみて、やっぱり向いてないと思えばやめたっていいし、自分では意外なことが向いていると発見できるかもしれない。

どう生きるかの選択は自分次第。

思い通りにいかないことももちろんたくさんあるけれど、わたしはライフワークと出会えたので、それだけでもラッキーだなと思っています。

 

つかまい子

早稲田大学を卒業後、役者として数々の作品に出演。

結婚後、想いを表現する方法を探していて偶然ウーマンクリエイターズカレッジ絵本の学校を見つけ、直感で入学。松本えつを氏に師事する。

現在はウーマンクリエイターズバンクに所属し、企業がつくる絵本の文章作家、コラムライター、読み聞かせ講師などの仕事で活躍。

2019年、バンクの仲間と共作した絵本『にじいろかあさん』(CHICORA BOOKS)が出版される予定。

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