絵本作家になりたい! そう思い立って入った絵本の学校での1年間

わたしが絵本の学校の扉を叩いたのは、ちょうど一年ほど前のことでした。
中小企業の営業職として仕事が充実してきた矢先、うつを発症して休職。
仕事=楽しいもの、と思っていただけに自分でもショックで、毎日布団をかぶって泣くだけの日々が続きました。

そのときにかかった心療内科の先生に、「楽しいと思うことだけやっていきなさい。必ず治るから」といわれ、気づけばスケッチブックを買い、昔から好きだったお話のワンシーンを絵に描いていました。
それを見た母が、「あんた、絵本作家になれるわよ。これ、売れるわよ」といったのを真に受け、「じゃあ、絵本作家になろう」と思い立ったのです。

ネットで検索してヒットしたのが、絵本の学校ウーマンクリエイターズカレッジ。
問い合わせをしたら、優しそうな女性から電話が来ました。
創設者の松本えつをでした。
「この先生、優しそうだからいけるかもしれない!」と思って入校したのは、ほかのクラスメイトより少し遅い、5月のことでした。

入校していちばん驚いたのは、「ではみなさん、好きな絵本をかいてきましょうね。はいよくできました。ぱちぱち」という授業が一回もないところ。
ランダムに並べられたページに対してストーリーをつくる授業や、キーワードからお話を生み出す宿題。
企画発表会ではプロのクリエイターや編集者のかたたちの前で、自分の企画の魅力をプレゼンしました。

そこからは卒業制作に向けての日々。
ストーリーをなんども練り直し、絵をなんども描き直しました。
慣れないパソコンに向かい印刷所に入れるためのデータもつくりました。
それと同時に卒業展示会の準備も進め、先生と仲間たちに助けてもらいながら、ときにはケンカをしながら、最後には1冊の絵本をつくりあげ、卒業することができたのです。

絵本の学校で学べたことは、出版物としての絵本をつくる技術だけではありません。
絵を描く楽しさ、お話を考えたる楽しさ、また、思いやりや、責任を持ってやり遂げることの大切さも学んだ、とても貴重な1年でした。

でも、わたしたちにとっては、これが卒業ではありません。
なぜなら、絵本作家として、クリエイターとして、やっと一歩を踏み出したばかりだからです。

ホウバイシ(絵本作家・ライター)