これから絵本をつくる人におすすめしたい名作絵本『パセリともみの木』

20世紀の終わりかたに、現在のイタリア北部で生まれ、その後アメリカへ渡った絵本作家、ルドウィッヒ・ベーメルマンス。

『げんきなマドレーヌ』をはじめとするマドレーヌ・シリーズや、『特急キト号』、あしかの『マリーナ』の絵本を読んだことがあるかたもいるのではないでしょうか。

今回ご紹介したいのは、ベーメルマンスの『パセリともみの木』というお話です。

****お母さんキャラのシカ・パセリ****

『パセリともみの木』の主人公は二人。正確に言うと両者とも人間ではないので、二人と言っていいか不明ですが。
パセリという名の大きなシカと、崖っぷちに生えてしまった一本のもみの木の友情の物語です。

パセリはその名の通りパセリが大好きで、いつもパセリをたくさん食べていました。
どうも、お母さんが「体にいいから食べなさい」と言っていたようです。
パセリもほかのシカや動物などのなかまたちにまで、「君たちもパセリを食べなよ。体にいいぜ!」というようなことを言うので、いつの間にか本人(本シカ)が『パセリ』と呼ばれるようになったそうです。ちなみにパセリの性別は不明です。

 

****哲学的な設定のもみの木****

一方もみの木は、断崖絶壁の崖っぷちに生えたせいで、まっすぐに伸びずに曲がってしまいました。
そのせいで見向きもされませんでしたが、結果的に人間に木材として切り倒されずに済み、命を長らえていました。

ここの部分、とても哲学的に思えました。
「まるで中国哲学の『老子』に出てくる“無用の用”にそっくりじゃないか!」(以下自粛)
曲がってしまったもみの木に、自分をなぞらえる人もいるのではないかな、と思いながら、自分自身も曲がったもみの木的な存在だと一瞬感じて読み進めると、友だちのパセリに危機が訪れます。

 

****重厚なハッピーエンド****

野菜のパセリを夢中になって食べているシカのパセリは大きくて立派です。
それに猟師が狙いを定め、撃とうとします。
もみの木はパセリを守るために、枝をばねのようにはねて猟師を谷底へと落とすのでした。
こうしてパセリともみの木はまた仲良く幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。

 「これはハッピーエンドなのか?」

と複雑な気持ちになって読み終えました。

どうしても猟師目線になってしまって、「谷底に落ちるなんて哀れだ」とか「結構大人な内容だな」などと思いました。

 

****子どものころと感覚が違うかも****

でも、もしこの物語を子どものころに読んでいたら、素直にハッピーエンドだと思えた気がします。

「大人は背景や設定など、余計なことを考えながら読んでしまうけれど、子どもはもっと純粋に読むのではないだろうか?」

絵本をかくのに自分の思いを表現するのも大切ですが、子どもならどう受け取るかということを、もう一度見つめ直すきっかけになった1冊でした。

ホウバイシ(絵本作家・ライター)

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